- 民法第1045条
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- 負担付贈与がされた場合における第1043条第1項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
- 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
- 平成30年改正前民法第1038条
- 負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。
- 平成30年改正前民法第1039条
- 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
条文の趣旨と解説
負担付贈与に関する規律(本条1項)
負担付贈与がされた場合は、その目的財産の価額から負担の価額を控除した額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入します。
不相当な対価による有償行為がある場合(本条2項)
平成30年改正前民法1039条は、不相当な対価をもってした有償行為がある場合、遺留分の算定の基礎となる財産の額を算定する際には対価を控除した残額部分を加算するが(改正前民法1039条前段)、減殺の対象となるのはその全額であり、その代わりに遺留分権利者は対価を償還しなければならないとしていました(改正前民法1039条後段)。
しかし、遺留分権利者に、本来権利行使できる価額を超えて減殺を認める必要性は乏しいという指摘がありました。また物権的効果を生じる遺留分減殺請求権を見直し、金銭請求権を発生させる遺留分侵害額請求権として構成する改正民法の下では、目的財産全部に対する減殺を認めつつ対価を償還させるというスキームを採用する合理性に欠けるといえます(法制審議会民法(相続関係)部会『部会資料13』)。
そこで、民法改正では、対価の償還を規定していた改正前民法1039条後段の規律を削除しています。