民法第370条
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。
平成29年改正前民法第370条
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第424条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。

条文の趣旨と解説

抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲を定めています。抵当権は、抵当不動産のほか、抵当不動産に付加して一体となっている物(「付加物」といいます。)に及びます。

付加物の意義について

抵当不動産に付合(242条)した物は、本条の付加物に含まれます。

しかし、不動産に附属させられ当該不動産の常用に供されているが、物としての独立性は失っていない従物(87条1項)に抵当権の効力が及ぶといえるかについては、争いが生じていました。
この点について、抵当権設定当時に従物が存在していた事案において、判例は、抵当権の効力は従物にも及ぶと判示しました(大審院大正8年3月15日判決、最高裁昭和44年3月28日第二小法廷判決)。他方で、抵当権設定後に設置された従物に対して抵当権の効力が及ぶことをはっきりと認めた最高裁判例は現れていないといわれています(古積健三郎『新注釈民法(6)物権(3)』)。

付加物に抵当権の効力が及ばない場合

他人が権原によって附属させた場合には、抵当権の効力は及びません(242条ただし書)。

また、抵当権の設定行為に別段の定めをすることによって、抵当権の対象外とすることもできます(本条ただし書)。もっとも、この別段の定めは、登記をしなければ第三者に対抗することはできません(不動産登記法88条1項4号)。

付加の行為について、詐害行為取消請求の要件(424条1項、3項)を充足するときも、当該付加物に対して抵当権の効力は及ばないものとされています(本条ただし書)。

従たる権利

借地上の建物に抵当権が設定された場合において、判例は、「建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となって一の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含される」と判示しています(最高裁昭和40年5月4日第三小法廷判決)。

条文の位置付け