民法第264条の3
  1. 前条第4項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
  2. 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。
    1. 保存行為
    2. 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

条文の趣旨と解説

所有者不明土地管理人の権限について定めています。

土地所有者の管理処分権との関係

土地の適切な管理を図るためには、所有者不明土地管理人が管理処分権を行使することを認める必要があります。
一方で、所有者不明土地管理制度の対象には、所有者の所在の特定が困難ではあるものの、所有者自身は別の地で生活しているような場合が含まれるため、所有者不明土地管理命令が発令された後に、所有者が当該土地を売却する事態も想定されます(『民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明』)。
そこで、民法は、所有者不明土地管理人と取引をした相手方の取引の安全を図るため、所有者不明土地管理人に管理処分権を専属させるものとしています(本条1項)。

所有者不明土地管理人の権限について

保存行為及び所有者不明土地等の性質を変えない範囲内においてその利用又は改良を目的とする行為については、裁判所の許可を得ずに行うことができますが、これらの範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得る必要があります(本条2項本文)
裁判所の許可が必要な行為につき、許可を得ずにした場合には、取引の安全の観点から、取引の相手方を保護するため、裁判所の許可がないことをもって、善意の第三者に対抗することはできないものとされています(本条2項ただし書)。

条文の位置付け