今回のコラムでは、はじめて相続の手続をされる方に向けて、
- 戸籍って何?
- どうして戸籍が必要となるの?
- 戸籍謄本はどのように取り寄せればよいの?
といった戸籍に関するお話をしたいと思います。
「戸籍」という言葉は聞いたことがあるかと思いますが、戸籍には何が書かれているのでしょうか。
「戸籍」には、氏名、出生の年月日、実父母の氏名、続柄などが記載されています。
つまり、戸籍を調べることによって、家族の関係を知ることができます。
相続の手続をする際には、相続人が誰であるかを確定する必要があり、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を調べることになります。また、預貯金や不動産の名義変更などの相続の手続を行う際にも、相続人であることを明らかにするため、戸籍謄本等が必要となります。
戸籍について
(1) 戸籍とは
戸籍という制度は、人の出生から死亡に至るまでの親族関係などを記録するものです。いつ、どこで、生まれて、誰と結婚して、誰の親になって、ということなどが記録されています。ちなみに、戸籍制度は、日本国籍をもっているということを公的に証明する役割も、兼ねています。
(2) 戸籍の編製
戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一組の夫婦と子ごとに編製されます。つまり、簡単にいえば、「夫婦と結婚していない子」をひとつの単位として、戸籍が編製されるということです。そして、子どもが結婚をすると、その子はもとの戸籍から抜けて、子の夫婦について新しい戸籍が作られます。
(3) 除籍
結婚などによって新戸籍が編製された場合には、従前の戸籍から抜けます。このことを「除籍」といいます。亡くなった場合にも従前の戸籍から除籍されることになります。
戸籍には何が書かれている?
(1) 戸籍の記載事項
たとえば、
- 本籍
- 氏名
- 出生の年月日
- 戸籍に入った原因及び年月日
- 実父母の氏名及び実父母との続柄
- 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
- 夫婦については、夫または妻である旨
- 他の戸籍から入ったものについては、その戸籍の表示
などが記載されています。
(2) 筆頭者
戸籍内の各人の氏名が順番に記載されますが、戸籍の一番最初に記載されている人を「筆頭者」といいます。筆頭者は「夫の氏を称するときは夫、妻の氏を称するときは妻」です。
(3) 本籍
戸籍が所属する場所のことをいいます。
戸籍は本籍地のある市町村で編製されることになります。
戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本について
相続などの手続をする際には、「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍謄本」などが必要となる場合があります。
- 戸籍謄本
- 戸籍に記載されている内容の全部を写したものです。戸籍がコンピュータ化されているところでは、「全部事項証明書」といいます。
- 戸籍抄本
- 戸籍に記載されている内容の一部を写したものです。「一部事項証明書」「個人事項証明書」ともいいます。
- 除籍謄本
- 戸籍に記載された方全員が除籍された場合には、その戸籍は戸籍簿から除かれ、「除籍簿」につづられます。除籍謄本は、除籍簿につづられた戸籍全部を写したものです。
- 改製原戸籍謄本
- 法律等の改正によって、戸籍の形式が作り変えられることがあります(「改製」といいます。)。戸籍が改製される前の戸籍を改正原戸籍といいます。
戸籍謄本等を取り寄せる方法
相続のために戸籍の記載を調べるためには、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を交付してもらいます。
(1) 管轄する役所
本籍地のある市区町村役場に戸籍謄本の交付を請求します。
(2) 戸籍謄本等を交付してもらう方法
市町村役場の窓口で、所定の申請用紙を利用して、交付申請をする方法以外にも、郵送で請求して、送付してもらうこともできます。
郵送で請求する場合には、
- 交付請求書
- 本人確認書類の写し
- 返信用封筒
- 手数料(定額小為替を利用します)
を市町村役場宛てに送付します。
(3) 戸籍謄本等を請求できる人
- 戸籍に記載されている本人
- その配偶者
- 直系尊属(父母以上の血族のことで、祖父母、曾祖父母など)
- 直系卑属(子以下の血族のことで、孫、曽孫など)
は、戸籍謄本等の交付を請求することができます。
上記以外の第三者は、
- 自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
- 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合
- 戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合
に限り、戸籍謄本等の交付を請求することができます。
なお、弁護士等の法律専門家は、受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要がある場合等には、第三者の戸籍謄本等の交付の請求をすることができます。