- 民法第472条の3
- 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。
条文の趣旨と解説
平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しません(本条)。
この規定は、免責的債務引受がされることによって、債務者は債権債務関係から解放されると期待すると考えられることから、この期待を保護しようとするものです。
なお、本条は引受人と債務者との合意による対価の支払を否定する趣旨ではなく、債務者と引受人との間で、引受けの対価の支払の合意をすることは可能です。
また、免責的債務引受の引受人が求償権の取得を希望する場合には、併存的債務引受をした上で債権者が債務者の債務のみを免除するという方法や、保証契約を締結する方法によれば、引受人が債務者に対して求償することができるものと考えられます(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。また、債務者及び引受人間の合意について委任の規定が適用される場合には、委任の規定(649条、650条)によって債務相当額を請求することもできると考えられます(部会資料67A)。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 総則
- 債務の引受け
- 民法第470条 – 併存的債務引受の要件及び効果
- 民法第471条 – 併存的債務引受における引受人の抗弁
- 民法第472条 – 免責的債務引受の要件及び効果
- 民法第472条の2 – 免責的債務引受における引受人の抗弁等
- 民法第472条の3 – 免責的債務引受における引受人の求償権
- 民法第472条の4 – 免責的債務引受による担保の移転
- 債務の引受け
- 総則
- 債権