民法第472条の2
  1. 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
  2. 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。
免責的債務引受がされた場合、引受人は債務者が負担した債務と同一内容の債務を負担することになるため、引受人は債務を負担したときに債務者が有する抗弁をもって債権者に対抗することができます(本条1項)。

債務者が取消権又は解除権を有するとき

取消権(120条)又は解除権(540条)は契約当事者である債務者が行使すべきものであることから、引受人は解除権等を行使することはできません。しかし、債務者が解除権等を行使すれば引受人の債務も消滅するにもかかわらず、解除権等が行使されるまでは引受人が引き受けた債務の履行を拒絶することができないというのは妥当ではないものと考えられます。
そこで、債務者が解除権又は取消権を有する場合には、引受人は、これらの権利によって債務者がその債務を免れるべき限度において、その債務の履行を拒絶することができるものとされています(本条2項)。

なお、債務者が相殺権(505条)を有する場合は、連帯債務の規定(439条2項)が適用される併存的債務引受(470条1項)の場合と異なり、免責的債務引受によって債務者が免責され、債務者と引受人が連帯債務の関係に立たないため、引受人は、債務者が相殺権を有することを理由として、債務の履行を拒絶することは認められません。

条文の位置付け