民法第120条
  1. 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
  2. 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
平成29年改正前民法第120条
  1. 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
  2. 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

条文の趣旨と解説

制限行為能力者の行為

行為能力の制限によって取り消すことができる場合、すなわち、未成年者が法定代理人の同意を得ずに法律行為をした場合(民法5条1項本文、2項)、成年被後見人が法律行為をした場合(民法9条本文)、被保佐人が補佐人の同意を得なければならない行為を被保佐人の同意を得ずにした場合(民法13条1項本文、4項)、被補助人が補助人の同意を得なければならない行為を補助人の同意を得ずにした場合(民法17条1項、4項)などには、制限行為能力者自身が自分の行為を取り消すことができるほか、その代理人、承継人又は同意をすることができる者が、取り消すことができます(本条1項)。

なお、行為能力を制限する原因がまだ存在する場合でも、制限行為能力者自身が、単独で取り消すことができると解されています(四宮和夫・能見善久『民法総則〔第9版〕』)。

錯誤、詐欺又は強迫があった場合

錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人が、取り消すことができます(本条2項)。

条文の位置付け