民法第918条
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
令和3年改正前民法第918条
  1. 相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
  2. 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
  3. 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

条文の趣旨と解説

相続開始から相続の承認又は放棄が行われるまでの間については、相続人に相続財産を管理する義務が課されています。もっとも、管理義務の内容は軽減され、自己の固有財産におけるのと同一の注意で足りるものとされています(本条)。

相続人が相続の承認又は放棄の選択権を行使した後は、本条の規律の対象から外れます。
まず、単純承認がされた場合には、相続人自身の財産となることから、管理の義務は消滅します。
限定承認がされた場合は、相続債権者のために管理する必要があることから、固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならないものとされています(926条1項)。
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して、当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならないものとされています(940条1項)。

条文の位置付け