- 民法第657条の2
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- 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
- 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
- 受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。
条文の趣旨と解説
平成29年民法(債権関係)改正に伴い、新設された規定です。
寄託が諾成契約と改正されたことにより(657条参照)、寄託契約の成立から寄託物の引渡しまでの間に時間的間隔が生じることとなりました。そこで、本条は、寄託物の引渡前の段階における当事者の解除権を定めます。
寄託者からの解除
寄託物受取前には、寄託者は自由に寄託を解除することができます。寄託は寄託者のためにされる契約であるところ、寄託者が望まなくなった場合には契約関係を存続させる必要はないと考えられるからです。ただし、解除によって受寄者に生じた損害は賠償しなければなりません。
受託者からの解除
寄託者が寄託物を引き渡さず、解除もしない場合、受寄者がいつまでも契約に拘束されることになってしまいます。そこで、一定の要件の下で、受託者からの解除も認められることとなりました。
まず、寄託契約が書面で締結されておらず、かつ報酬の約束のない無償寄託の場合には、受託者は、寄託物を受け取るまでは自由に契約の解除をすることができます。
(i)有償寄託の場合、(ii)書面による無償寄託の場合であっても、寄託物を受け取るべき時を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、受寄者が相当の期間を定めて寄託物の引渡しを催告し、その期間内に引渡しがないときには、受寄者は、契約の解除をすることができるものとされました。