民法第600条
  1. 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
  2. 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
平成29年改正前民法第600条
契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

条文の趣旨と解説

損害賠償請求権等の除斥期間

契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害賠償請求権(415条1項)や借主が支出した費用償還請求権(595条2項において準用する583条2項本文)は、貸主が返還を受けた時から、1年の除斥期間にかかります(本条1項)。

消滅時効の完成猶予

契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害賠償請求権は、1項の除斥期間のほかに、借主が用法違反をした時から起算される10年の消滅時効(166条1項2号)にも服することとなります。
しかし、使用貸借が長期にわたる場合、貸主が借主の用法違反の事実を知らない間に消滅時効が進行し、貸主が返還を受けた時には消滅時効が完成しているといった事態も生じかねません。
そこで、平成29年民法(債権関係)改正によって、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効の完成を猶予するものとされました(本条2項)。

条文の位置付け