- 民法第439条
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- 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。
- 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。
- 平成29年改正前民法第436条
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- 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、すべての連帯債務者の利益のために消滅する。
- 前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分についてのみ他の連帯債務者が相殺を援用することができる。
条文の趣旨と解説
相殺は弁済と同じく債権者を満足させるものであることから、連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合に、その債務者が相殺を援用したときは、絶対的効力を生じ、他の債務者も債務を免れます(本条1項)。
平成29年民法(債権関係)改正
改正前民法436条2項は「他の債務者が相殺を援用することができる。」と定めており、「相殺を援用」の意義について、改正前民法下における判例は、相殺する権限を与えるものと解していました。
しかし、反対債権を有する債務者の負担部分に相当する額だけ弁済を拒絶する抗弁権を認めれば足り、それ以上に、他人の債権を処分する権限を与える必要はないという指摘がされていました(我妻栄『新訂債権総論』)。
そこで、改正民法では、「その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と改められました(本条2項)。