- 民法第911条
- 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
条文の趣旨と解説
遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼるとされていることから(909条本文)、各相続人は、遺産分割によって得た権利を、相続開始時に被相続人から直接に承継したことになります。そうすると相続人間において、担保責任は問題とならないはずです。
しかし、実際には、共同相続人間においても交換的過程によって遺産を分割したという事実を無視することはできず、共同相続人間の公平維持という観点から、共同相続人は担保責任を負うものと定められました(中川善之助『相続法』)。
担保責任の内容
民法は売主の担保責任として561条から572条の規定を置いていますが、そのすべての規定が準用されるというわけではなく、遺産分割の性質に照らして必要な範囲で準用されるものと考えられています。
条文の位置付け
- 民法
- 相続
- 相続の効力
- 遺産の分割
- 民法第906条 – 遺産の分割の基準
- 民法第906条の2 – 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
- 民法第907条 – 遺産の分割の協議又は審判等
- 民法第908条 – 遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止
- 民法第909条 – 遺産の分割の効力
- 民法第909条の2 – 遺産の分割前における預貯金債権の行使
- 民法第910条 – 相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権
- 民法第911条 – 共同相続人間の担保責任
- 民法第912条 – 遺産の分割によって受けた債権についての担保責任
- 民法第913条 – 資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担
- 民法第914条 – 遺言による担保責任の定め
- 遺産の分割
- 相続の効力
- 相続