ぼくの司法試験 – 喫茶店のおばさんが教えてくれたこと

学生時代に過ごした街は、その後の人格形成に大きな影響を与えると言われる。
多くの人にとって初めての独り暮らしになるし、
本当にいろんな人との出会いがある。

ぼくも学生時代はいろんな人に面倒を見てもらった。
司法試験やってたから、いろんな人が応援してくれた。

もうあれからずいぶん経つけど、
試験勉強中に、一番、心に残っているのは、喫茶店のおばさんの言葉だ。

ぼくは学生時代、勉強の合間に、とんかつ屋でバイトしていた。
そのバイトをしてたとんかつ屋の近くに、小さな喫茶店があった。
カウンターとスツールがある昔ながらの喫茶店だ。おばさんは、喫茶店の店主だった。

ぼくはバイトが終わった後によくコーヒーを淹れてもらって、
カウンター越しに喫茶店のおばさんと話をしてた。
おばさんは、いつもぼくのことを「きんちゃん」と呼んで、息子のように可愛がってくれていた。
そんなやりとりが心地よくて、ぼくは頻繁に通っていた。

もともとコーヒーが好きだったので、おばさんの手元を見て、美味しいコーヒーの淹れ方を覚えた。
ココアの美味しい作り方やロイヤルミルクティーの作り方も教えてもらった。
実際に家で教えてもらったとおりに作ってみたけど、本当に美味しかった。

そのおばさんが、ぼくを叱ったことがある。
ぼくがとんかつ屋のメニューをぜんぶ覚えてなかったことにたいして。

ぼくは、メニューなんて見れば分かるし、いちいち覚えてなくてもいいじゃんて、思ってた。
メニューを覚えていなかったとしても、業務には支障はなかった。
当時は、バイトだからという甘えもあったのかもしれない。

でもおばさんは、こう言った。
「きんちゃん、お客さんから信頼されなくちゃだめだよ」

なんか、今考えれば些細な一言だった。
けれど、ぼくは、そのとき喫茶店のおばさんの「プロ」精神を感じた。
たしかに、それはそうだよね、売ってる人が商品を売るものを覚えていなかったら、買う方も気持ちよく買えないもんね。

次の日、本当にびっくりしたんだけど、喫茶店のおばさんは、ぼくのために、とんかつ屋のメニューを書いた単語帳を作ってきてくれた。高校生のころに英単語を覚えるためによく使ってたやつ。

正直、嬉しいという気持ちよりも、自分に対する恥ずかしさが大きかった。

それから、ぼくは、その単語帳を使って、メニューを全部覚えた。
一つ一つの商品の、お肉のグラム数まで覚えた。

ふっと、ぼくは、弁護士になるんだったら、法律のこと全部覚えてないとお客さんから信頼されなくなっちゃうなと思った。
そのときから僕は、法律をよく覚えた。 毎日毎日、ひたすら覚えた。

そして、ぼくは司法試験に合格した。
もちろん親には電話で一番に報告したけど、真っ先におばさんのいる喫茶店に向かった。

おばさんは、まるで自分のことのように喜んでくれた。
高い声が喫茶店の中に響き渡った。あのときのおばさんの喜んだ顔は忘れられない。
そこに居合わせた喫茶店のお客さんも、みんな拍手してぼくのことを祝ってくれた。

ぼくは、いい街で育てられたなと思った。

2008年の年末は、学生時代に過ごした街、仙台に行ってきた。
喫茶店は休みだったからおばさんには会えなかったけどね。

街を歩いているだけで、いろんな思い出が浮かんできた。
学生時代の友達とも会えたしね。

仙台の街

下の写真は、仙台の冬の風物詩、「光のページェント」。
道路脇のケヤキのイルミネーションは、800メートルも続くのだ。

光のページェント

仙台イルミネーション

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2008-12-28 | Posted in 法律家としてNo Comments » 

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