- 民法第658条
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- 受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
- 受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
- 再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。
- 平成29年改正前民法第658条
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- 受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用し、又は第三者にこれを保管させることができない。
- 第105条及び第107条第2項の規定は、受寄者が第三者に寄託物を保管させることができる場合について準用する。
条文の趣旨と解説
寄託物の使用
寄託は、物の保管を目的とする契約ですから、受寄者が保管の目的を超えて寄託物を使用することは認められません。ただし、寄託者の承諾がある場合に限り、例外的に寄託物を使用することができます(1項)。
第三者による保管
当事者間の信頼関係に基づいて保管を委託するものですから、原則として、第三者に保管させることも認められません(2項)。平成29年改正前民法658条は、寄託者の承諾を得た場合のみ、再委託を認めていました。
平成29年民法(債権関係)改正
もっとも、再寄託をする必要があるにもかかわらず、寄託者の承諾を得ることが困難な事情がある場合にも、再委託が認められず適当ではないと考えられます。また、委任の場合には、解釈によって「やむを得ない事由があるとき」には、復委任が許されると考えられてきましたが(644条の2の解説参照)、このこととの整合性を図るべきではないかとの指摘がありました。そこで、やむを得ない事由がある場合にも、寄託者が再受寄者を選任することができることとされました(2項)。
本条3項は、再委託が行われた場合における、寄託者と再受寄者との間の権利関係を明らかにするものです。