民法第551条
  1. 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引渡し、又は移転することを約したものと推定する。
  2. 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
平成29年改正前民法第551条
  1. 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
  2. 負担付き贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。

条文の趣旨と解説

平成29年改正前民法551条は、特定物を贈与する場合の通常の意思として、現状有姿のまま与えるものであり、仮に物質的瑕疵があった場合でも、完全なものにして与える意思まではないと考えられることから、原則として担保責任を負わず(改正前民法551条1項本文)、ただ、贈与者が瑕疵を知りながら受贈者に告げなかった場合のみ、損害を賠償する責任を負うものと規定していました(同項ただし書)。
平成29年民法(債権関係)改正では、贈与者も、売買と同様に、契約の内容に適合した目的物を引き渡す債務を負うことを前提としつつも、贈与者の責任を軽減する観点から、「贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引渡し、又は移転することを約したものと推定する」としました(本条1項)。

負担付贈与(553条)については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任(561条570条572条)を負います(本条2項)。

条文の位置付け