- 民法第137条
- 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
- 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
条文の趣旨と解説
(1) 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、(2) 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき、(3) 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないときは、債務者は期限の利益を主張することができなくなります。
本条の効果
「期限の利益を主張することができない」とは、当然に期限到来の効果が生ずるというのではなく、債権者が直ちに請求することができるという意味であると解されています(我妻栄『新訂民法総則』)。したがって、債権者が請求するまでは、期限が到来することはなく、債務者は履行遅滞には陥らないと考えられています。
なお、本条の定めとは別に、破産債権者に対して配当を行うという破産法上の要請から、破産法では、弁済期が到来していない期限付債権については、破産手続開始の時において弁済期が到来したものと擬制されます(破産法103条3項)。そのため、本条1号の規定が適用される余地はなくなっています。
当事者間の特約
実務では、本条が定める事由以外の特定の事実が発生した場合にも、期限の利益を喪失するという特約をすることが多くあります。具体的には、割賦払債務の弁済を怠ったとき、支払停止や支払不能の状態に陥ったとき、他の債権者から差押え等を受けたときなどと定めることが考えられます。
さらに、この特約の種類として、特約で定める事由が生じれば債権者の意思表示がなくても当然期限が到来するという約定と、債権者が債権者の意思表示によって期限を到来させるという約定があります。前者の場合には、特約が定める事由の発生によって履行遅滞に陥り、後者の場合には、債権者の請求によって履行遅滞に陥ります。