- 民法第21条
- 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
条文の趣旨と解説
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、制限行為能力者の保護よりも相手方の保護を優先させ、制限行為能力者の取消権は否定されます(本条)。
「詐術」に該当するかどうかについて、平成11年民法改正(成年後見制度の改正)前の事案ですが、判例は、「相手方に対し積極的術策を用いた場合にかぎるものではなく、無能力者が、ふつうに人を欺くに足りる言動を用いて相手方の誤信を誘起し、または誤信を強めた場合をも包含する」「無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟つて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもつて、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない。」と判示しています(最高裁昭和44年2月13日第一小法廷判決)。
条文の位置付け
- 民法
- 総則
- 人
- 行為能力
- 民法第4条 – 成年
- 民法第5条 – 未成年者の法律行為
- 民法第6条 – 未成年者の営業の許可
- 民法第7条 – 後見開始の審判
- 民法第8条 – 成年被後見人及び成年後見人
- 民法第9条 – 成年被後見人の法律行為
- 民法第10条 – 後見開始の審判の取消し
- 民法第11条 – 保佐開始の審判
- 民法第12条 – 被保佐人及び保佐人
- 民法第13条 – 保佐人の同意を要する行為等
- 民法第14条 – 保佐開始の審判等の取消し
- 民法第15条 – 補助開始の審判
- 民法第16条 – 被補助人及び補助人
- 民法第17条 – 補助人の同意を要する旨の審判
- 民法第18条 – 補助開始の審判等の取消し
- 民法第19条 – 審判相互の関係
- 民法第20条 – 制限行為能力者の相手方の催告権
- 民法第21条 – 制限行為能力者の詐術
- 行為能力
- 人
- 総則