民法第21条
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

条文の趣旨と解説

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、制限行為能力者の保護よりも相手方の保護を優先させ、制限行為能力者の取消権は否定されます(本条)。

「詐術」に該当するかどうかについて、平成11年民法改正(成年後見制度の改正)前の事案ですが、判例は、「相手方に対し積極的術策を用いた場合にかぎるものではなく、無能力者が、ふつうに人を欺くに足りる言動を用いて相手方の誤信を誘起し、または誤信を強めた場合をも包含する」「無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟つて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもつて、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない。」と判示しています(最高裁昭和44年2月13日第一小法廷判決)。

条文の位置付け