一般的に、遺言という用語は、「身寄りの方のために遺す言葉」というような意味合いで使われていますが、法律上の制度としての「遺言」(いごん)は、やや異なります。

法律上の「遺言」という制度は、遺言者が生前にした意思表示について、遺言者が亡くなった後に、法律上の効力を認める制度です。たとえば、「この不動産を誰々に相続させる」という遺言者の生前の意思について、遺言者が亡くなった後に、当該不動産の所有権が移転するという法律上の効力を発生させることとなります。

遺言の内容を実現するために一定の行為などを要する場合には、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)が遺言を執行します。

今回のコラムでは、遺言という制度について、解説したいと思います。

teacup

遺言でできること

遺言は、遺言者が亡くなった後に効力が発生するものですから、遺言の内容に不明確な部分や疑問点があった場合に、遺言者に遺言の意味を尋ねることはできません。

そのため、遺言を遺された方々の間で争いとならないように、法律上、遺言でできることが厳格に定められています。
具体例を挙げれば、(1)遺贈などの財産の処分に関する事項、(2)認知などの身分上の事項、(3)相続分の指定など相続に関する事項、(4)遺言執行者の指定などの遺言の執行に関する事項、(5)祭祀主宰者の指定などです。

詳しくは以下の記事をご参照いただければと思います。
遺言でできること – 有効な遺言をするために

遺言ができる条件

15歳に達した方であれば、遺言をすることができます。
ただし、15歳以上の方であっても、遺言の内容とその法律効果を理解判断するのに必要な能力を備えていることが必要とされています。

遺言の方式

遺言の方式には

  • 普通方式
  • 特別方式

の遺言があります。

特別方式の遺言について

特別方式の遺言は、普通方式による遺言ができない例外的な場合に利用されるものです。
具体的には、

  • 疾病などにより遺言者に死亡の危険が迫っている状況での危急時遺言、
  • 船舶遭難の状況下での船舶遭難者遺言、
  • 伝染病により隔離された者がする伝染病隔離者遺言、
  • 船舶中にいる者がする在船者遺言

があります。

このように特別方式の遺言は、特別な状況下での遺言といえます。特別な状況が過ぎ去って、普通の方式によって遺言をすることができるようになってから6カ月間生存していたときには、特別方式の遺言は効力を失うものとされています。

普通方式遺言の作成方法

普通方式の遺言には、

  • (ア)自筆証書遺言
  • (イ)公正証書遺言
  • (ウ)秘密証書遺言

という作成方法があります。

遺言の作り方は厳格に定められており、要件を満たさない場合には、遺言が無効となってしまう可能性がありますので、注意が必要です。

以下では、作成方法の概略をご説明しておりますが、作成する際には、法律専門家の助言を受けることをお勧めいたします。

(ア) 自筆証書遺言

遺言者が、その全文、日付および氏名を、自書して、押印します。
「自書」が要件となっており、本人が自ら書く必要があります。

費用がかからず、容易に作成できるというメリットがありますが、一方で、加除訂正の方法も厳格に定められているなど、要件が厳格であることから、方式不備により無効となる可能性が高い方式ともいえます。

(追記)
平成30年相続法改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されました。
詳細は、以下の記事にて解説をしておりますので、ご参照いただければと思います。
自筆証書遺言の方式を緩和する方策 – 相続法改正の解説

(イ) 公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が、遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が遺言者の口述を筆記して作成します。
遺言者と公証人のほか、証人2人の立会が必要です。
公証人が筆記した遺言の内容を遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させ、遺言者と証人が筆記が正確であることを確認したのち、各自、署名して押印します。
最後に、公証人がその証書が方式に従って作成したものであることを付記して、公証人が署名押印します。

このように公証人が関与して作成されるため、方式の不備により無効となる可能性をなくすことができ、また、公正証書遺言の原本が公証役場に保管されますので、遺言書が破棄されたりするおそれがありません。

(ウ) 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書(自筆証書遺言と異なり自書であることは要件とされていません。)に署名押印をしたうえで、この遺言書を封じ、遺言書に用いた印章をもって封印し、公証人と証人2人以上の前にその封書を提出して作成します。封書の提出を受けた公証人は、証書が提出された日付と遺言者の申述(自身の遺言書であることと筆者の氏名および住所)を封紙に記載し、遺言者と証人とともに封紙上に署名押印をします。

生前は遺言の内容を秘密にしておくことができるというメリットはありますが、手続が煩雑であることや、弁護士等への依頼、公正証書遺言を利用しても同様に秘密は守られることから、利用されている例は少ないようです。

遺言書の作成において、弁護士がお手伝いできること

遺言書の文案の作成や遺言の内容に関してのご相談などもお受けしております。

遺言書は厳格な要件が定められていますので、もし疑問点などがございましたら、弁護士などの法律専門家にご相談されることをお勧めします。

私へのご相談は、お電話または下記「法律相談の予約」ページ内のコンタクト・フォームをご利用ください。
法律相談の予約

関連する記事

そのほか、相続の基礎知識や遺言に関する記事は、以下のページもご参照いただければと思います。