民法第648条
  1. 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
  2. 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。
  3. 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
    一 委任者の責に帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
    二 委任が履行の中途で終了したとき
改正前民法第648条
  1. 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
  2. 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。
  3. 委任が受任者の責に帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。

条文の趣旨と解説

無償性の原則(本条1項)

知能的な高級労務は、報酬と結びつくのに適さないという古代ローマ法における思想から、委任は無償を原則とするとされてきました。
しかし、社会的・経済的事情の変遷とともに、有償が圧倒的に多くなり、本条1項は、今日の取引の実態に必ずしも適合しないと指摘されています。判例でも、弁護士報酬につき別段の定めがなかった場合において、当事者の意思を推定して相当報酬額を定めたものがあります(最高裁昭和37年2月1日判決)。
なお、平成29年民法(債権関係)改正においても、本条1項を削除すべきではないかとの提案がされましたが(「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」)、実現には至っていません。

報酬の支払時期(本条2項)

報酬の支払時期に関して、特約がないときには後払です。ただし、期間によって報酬を定めたときには、その期間を経過した後に請求することができます(民法624条2項を準用)。

割合に応じた報酬(本条3項)

改正前民法648条3項は、委任が受任者の責に帰することができない事由によって中途で終了した場合に、既履行部分の割合に応じて報酬を請求することができるとしていましたが、委任が終了するまでは受任者は委任事務を処理していたのですから、受任者の帰責事由の有無にかかわらず、受任者は既履行部分の割合に応じた報酬を請求することができるものとされました

条文の位置付け