民法第425条の2
債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。
改正前民法下における判例法理によれば、取消の効果が債務者に及ばないとされていたことから(大審院明治44年3月24日判決)、詐害行為が取り消されたとしても、受益者は、債務者に対して反対給付の返還を請求することができず、債権者らが債権の満足を得たときに初めて、債務者に対する不当利得返還請求権を行使することができるにすぎないと考えられていました。
そうすると、受益者は、債務者に対してした反対給付の返還請求権について、他の一般債権者に劣後する一方で、取消債権者及び他の一般債権者は、受益者が債務者に対して返還した財産と、受益者がその財産を取得するためにした反対給付の双方を、債務者の責任財産として把握することになります。しかし、このような結論は、取消債権者と受益者との間の利益衡量の観点からは相当ではないと考えられます(法制審議会民法(債権関係)部会「部会資料73A」)。
そこで、改正民法では、詐害行為取消請求を認容する確定判決は債務者に対しても効力を有するとした上で(425条)、詐害行為が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その反対給付の返還を請求することができ(本条前段)、反対給付の返還が困難であるときは、その価額の償還を請求できるものと定められました(本条後段)。

条文の位置付け