民法第406条

債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。

条文の趣旨と解説

選択債権

数個の給付中の選択によって決定する一個の給付を目的とする債権を選択債権といいます(我妻栄『新訂債権総論』)。

一定の範囲内の物を引き渡す債務の場合、制限種類債権と解するか、選択債権と解するかが問題となることがありますが、当事者が物の個性に重きを置くときは、選択債権となると考えられています。

選択債権は、法律の規定によって発生する場合もあり、例としては、賃借人の賃貸人に対する有益費償還請求権(民法608条2項本文民法196条2項)が挙げられます。

選択債権の特定

選択債権は給付が定まっていないことから、債権が履行されるためには、給付が定まる必要があります。これを選択債権の特定といいます。

特定が生じる場合としては、
(1) 当事者の合意、
(2) 選択権者による選択、
(3) 給付の不能の場合(民法410条)があります。

選択権者

選択権者が誰であるかは、当事者間の合意があればその合意に従いますが、選択権者について合意がないときは、選択権は債務者に属します(本条)。

条文の位置付け