民法第608条
  1. 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
  2. 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

条文の趣旨と解説

賃貸人の中心的な債務は、賃借人に目的物を使用収益させるという債務ですから、そのために必要な費用は、賃貸人が本来負担すべきものです。賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、賃貸借契約の終了を待たずに、直ちにその償還を請求することができます(1項)。

他方で、有益費は必ずしも賃貸人が負担すべきものではありませんが、返還の際に目的物の価値が増加していた場合には賃貸人の不当利得となるため、196条2項の規定に従って、償還しなければならないこととされました(2項)。

条文の位置付け