民法第1013条
  1. 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
  2. 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
  3. 前2項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。
平成30年改正前民法第1013条
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

条文の趣旨と解説

遺言執行者がいる場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません(本条1項)。ただし、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合は、その特定の財産以外の相続財産を処分することはできます(1014条1項)。

平成30年民法(相続関係)等改正

平成30年民法(相続関係)等改正では、遺言執行の妨害行為がされた場合の取扱いについて検討が行われました。法制審議会・民法(相続関係)部会における審議過程においては、改正前民法1013条を削除し、遺言による権利変動と相続人による処分が抵触する場合には対抗問題としてその優劣を決するという案も示されていましたが(『民法(相続関係)等の改正に関する中間試案』)、パブリックコメントの結果等を踏まえ(法制審議会民法(相続関係)部会第14回会議議事録)、改正民法では、遺言の執行を妨げるべき行為については原則として行為を無効とした上で、善意の第三者を保護することとされました(本条2項)。

また、本条2項が新設されたことに伴い、原則として相続人のした遺言の執行を妨げるべき行為は無効とされますが、それによって相続債権者等の権利行使が妨げられるのは相当ではないと考えられることから(部会資料25-2)、遺言執行者がいる場合でも相続債権者等の権利行使には影響を受けないことを明確にする規定が設けられました(本条3項)。

条文の位置付け