民法第1015条
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
平成30年改正前民法第1015条
遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。

条文の趣旨と解説

平成30年改正前民法においては、遺言執行者の法的地位が必ずしも規定上明確ではなく、改正前民法1015条が「相続人の代理人とみなす」と規定していたことから、遺言者の意思と相続人の利益とが対立する場合に、遺言執行者と相続人との間でトラブルが生じることがあるという指摘がされていました。
そこで、改正民法では、改正前民法1015条の規定を見直し、「相続人の代理人とみなす」という部分の実質的な意味を明らかにするという観点から、改正民法1015条では、遺言執行者の行為の効果は相続人に帰属することと規定しています(『民法(相続関係)等の改正に関する中間試案の補足説明』)。

なお、改正の過程において、改正前民法1015条の「代理人とみなす」との規定が削除されたことに伴い、民法の代理に関する規定、特に自己契約及び双方代理を規律する民法108条1項の適用関係が不明確になるとの議論がありましたが、改正民法1015条の規定によっても、遺言執行者にも民法108条が適用ないし準用されるという解釈が導かれ得ると説明されています(部会資料20)。

条文の位置付け