民法第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

条文の趣旨と解説

持分の放棄について

共有者は、その持分を放棄することができ、共有者の一人が持分を放棄したときは、その持分は他の共有者に帰属します。

持分の放棄は、本来、相手方を必要としない意思表示から成る単独行為ですが、その放棄によって直接利益を受ける他の共有者に対する意思表示によってもすることができます(最高裁昭和42年6月22日第一小法廷判決参照)。

不動産の持分の放棄による物権変動は、登記をしなければ第三者に対抗することができないと解されています(民法177条)。この場合に、「その権利の変動を第三者に対抗するためには、不動産登記法上、右放棄にかかる持分権の移転登記をなすべきであって、すでになされている右持分権取得登記の抹消登記をすることは許されない」とされています(最高裁昭和44年3月27日第一小法廷判決)。

共有者の一人が相続人なくして死亡した場合

本来、相続人のあることが明らかでない場合には、民法951条から民法958条に定める清算手続を経て、なお残存する相続財産があるときは、その相続財産は国庫に帰属するものとされています(民法959条前段)。
本条は、相続財産が共有持分の場合にも、相続財産不存在の場合の上記取扱いを貫くと、国と他の共有者との間に共有関係が生じ、国としても財産管理上の手数がかかるなど不便であり、また、そうすべき実益もないので、むしろ、そのような場合にはその持分を他の共有者に帰属させた方がよいとの考慮から、相続財産の国庫帰属に対する例外として設けられたものです(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決)。

共有者の一人が死亡して相続人がなく、かつ、特別縁故者(民法958条の2)に対する財産分与がされないことが確定したとき(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決)、その共有持分は他の共有者に帰属することとなります。

条文の位置付け