民法第192条
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

条文の趣旨と解説

動産の取引は頻繁に行われる一方で、権利関係の確認は通常困難を伴います。そこで、民法は、取引の安全を保護するため、占有という権利外観を信頼して取引をした者に権利取得を認めています。これを「即時取得」といいます。

即時取得の要件

即時取得が認められるのは「動産」に限られます。ただし、道路運送車両法による登録を受けている自動車については、登録が所有権の得喪並びに抵当権の得喪及び変更の公示方法とされていることから、即時取得の対象とはならないとされています(最高裁昭和62年4月24日第二小法廷判決)。

即時取得が成立するためには、「取引行為」の存在が必要です。
原始取得による場合や、相続等の包括承継の場合には、即時取得は認められません。

民法192条では、「占有を始めた」ことが必要とされています。この占有取得という要件に関しては、判例は、指図による占有移転(184条)は含まれるが(最高裁昭和57年9月7日第三小法廷判決)、占有改定(183条)は含まれないとしています(最高裁昭和35年2月11日第一小法廷判決)。

即時取得の成立のためには、善意、無過失、平穏、公然に、占有を取得することが必要です。このうち、善意、平穏、公然は、186条1項により、推定されます。無過失については、法文上の推定規定はありませんが、判例は、「占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される以上(民法188条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについては過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しない」としています(最高裁昭和41年6月9日第一小法廷判決)。

条文の位置付け