民法第499条
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
平成29年改正前民法第499条
  1. 債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
  2. 第467条の規定は、前項の場合について準用する。
平成29年改正前民法第500条
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に代位する。

条文の趣旨と解説

債務者以外の者が債務者のために弁済するときは、弁済者は債務者に対して求償権を取得することがあります。具体的には、物上保証人(351条372条)、不可分債務者(430条において準用する442条)、連帯債務者(442条)、保証人(459条459条の2462条)が弁済した場合に求償権を取得するほか、第三者の弁済(474条)の場合に、債務者の委託を受けて弁済をした第三者であれば委任事務処理費用の償還請求権(650条)として。委託を受けずに弁済をした第三者であれば事務管理費用の償還請求権(702条)又は不当利得返還請求権(703条)として、求償権を取得すると考えられます。
この求償権の効力を確保するため、弁済者は、債権者に代位し(本条)、求償権の範囲内で、債権の効力及び担保として債権者が有していた一切の権利を行使することが認められています(501条)。

平成29年民法(債権関係)改正について

平成29年改正前民法下においては、弁済による代位には、弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する「法定代位」と、弁済をするについて正当な利益を有しない者が債権者に代位する「任意代位」がありました。そして、改正前民法499条第1項は、任意代位の要件として、弁済と同時に債権者の承諾を得ることが必要とされていました。
しかし、この任意代位の規律に対しては、債権者において、弁済を受領したにもかかわらず、代位のみを拒絶することを認めるのは不当であるという批判がされていました(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。
そこで、民法改正では、任意代位の要件から、債権者の承諾が削除することとされました。

条文の位置付け