民法第102条
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
平成29年改正前民法第102条
代理人は、行為能力者であることを要しない。

条文の趣旨と解説

代理の法律効果は代理人には帰属しないことから、代理人を保護するために行為能力を理由とする取消権を認める必要はないものと考えられます。また、本人があえて制限行為能力者に代理権を授与した場合には、その効力を否定する必要はないといえます。そこで、制限行為能力者が代理人である場合でもその者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができないものとされています(本条1項)。

しかし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人である場合に、その代理行為を常に有効としてしまうと、本人の保護という制限行為能力者制度の目的が達せられないおそれがあります。また、法定代理の場合には、本人が代理人の選任に直接関与するわけではないため、代理人が制限行為能力者であることによって生ずるリスクを本人に引き受けさせる根拠にも乏しいと考えられます(法制審議会民法(債権関係)部会『部会資料66A』)。そこで、制限能力者が他の制限行為能力者の法定代理人である場合には、取消しを認めることとしています(本条2項)。

条文の位置付け