民法第931条
限定承認者は、前2条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

条文の趣旨と解説

限定承認者が行う弁済は先に相続債権者に対して弁済し(929条930条)、その後に残余財産がある場合に受遺者に対して弁済します(本条)。

本条が相続債権者を受遺者に優先させた理由としては、相続債権者は被相続人の財産を考慮に入れて債権を取得したものであり、受遺者は被相続人が遺産のうちから分与しようとしたものであるから、相続債権者が受遺者に優先するのは当然であり、被相続人は債務を完済しえないような財産状態なら遺贈をする余地などないといってよいはずである、などと説明されています(我妻栄・立石芳枝『親族法・相続法』)。

条文の位置付け