- 民法第931条
- 限定承認者は、前2条の規定に従って各相続債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。
条文の趣旨と解説
限定承認者が行う弁済は先に相続債権者に対して弁済し(929条、930条)、その後に残余財産がある場合に受遺者に対して弁済します(本条)。
本条が相続債権者を受遺者に優先させた理由としては、相続債権者は被相続人の財産を考慮に入れて債権を取得したものであり、受遺者は被相続人が遺産のうちから分与しようとしたものであるから、相続債権者が受遺者に優先するのは当然であり、被相続人は債務を完済しえないような財産状態なら遺贈をする余地などないといってよいはずである、などと説明されています(我妻栄・立石芳枝『親族法・相続法』)。
条文の位置付け
- 民法
- 相続
- 相続の承認及び放棄
- 相続の承認
- 限定承認
- 民法第922条 – 限定承認
- 民法第923条 – 共同相続人の限定承認
- 民法第924条 – 限定承認の方式
- 民法第925条 – 限定承認の方式
- 民法第926条 – 限定承認者による管理
- 民法第927条 – 相続債権者及び受遺者に対する公告及び催告
- 民法第928条 – 公告期間満了前の弁済の拒絶
- 民法第929条 – 公告期間満了後の弁済
- 民法第930条 – 期限前の債務等の弁済
- 民法第931条 – 受遺者に対する弁済
- 民法第932条 – 弁済のための相続財産の換価
- 民法第933条 – 相続債権者及び受遺者の換価手続への参加
- 民法第934条 – 不当な弁済をした限定承認者の責任等
- 民法第935条 – 公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者
- 民法第936条 – 相続人が数人ある場合の相続財産の管理人
- 民法第937条 – 法定単純承認の事由がある場合の相続債権者
- 限定承認
- 相続の承認
- 相続の承認及び放棄
- 相続