民法第932条
前3条の規定に従って弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付さなければならない。ただし、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

条文の趣旨と解説

限定承認者が行う弁済において、相続財産を売却する必要があるときは、競売の方法によらなければなりません(本条本文)。

限定承認者は、家庭裁判所の選任した鑑定人の評価に従って、相続財産の全部又は一部の価額を弁済することによって、その競売を止めることができます(本条ただし書)。この「競売を止めることができる」という規定の意味は、鑑定人の評価した価額を限定承認者が自己の固有財産から支払うことによって当該財産を取得する権利を認める趣旨であると解されています(中島弘雅『新注釈民法(19)』)。

条文の位置付け