民法第378条
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

条文の趣旨と解説

抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じて、その抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅します。これを「代価弁済」といいます。

抵当不動産の第三取得者は、抵当権の被担保債務を弁済することができますが(474条1項)、抵当権を消滅させるためには、債務の全額を弁済する必要があります。
一方、抵当権者は、物上代位の制度によって、売買代金の上にも抵当権の効力を及ぼすことができますが(372条において準用する304条。なお、売買代金への物上代位を否定する見解もあります。)、売買代金債権の差押えをしなければなりません(304条1項ただし書)。
そこで、第三取得者及び抵当権者の合意によって、差押えを要することなく、代価の弁済のみによって、抵当権を消滅させるという制度が、本条に定める代価弁済です。不動産価額が被担保債権額より少額である場合に有益な方法といえます。

条文の位置付け