- 民法第522条
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- 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
- 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
条文の趣旨と解説
契約の成立について(本条1項)
平成29年民法(債権関係)改正により、新設された規定です。
契約は、申込みと承諾によって成立します。この基本原理が改正民法で明記されました。
「申込み」の定義
従来、契約が成立したといえるかが問題となる場面において、一方の意思表示が、「申込み」に当たるか、「申込みの誘引」に過ぎないのかが、争われることがありました。
「申込みの誘引」とは相手方の申込みを促す事実行為であり、相手方の申込みがあった後に改めて契約を締結するかを判断することが予定されています。一方で、「申込み」は、契約の締結を申し入れる意思表示であって、相手方の承諾があれば契約が成立します。
改正民法では、この違いに着目して「申込み」の定義を明文で定めています(部会資料67-A)。
契約の方式について(本条2項)
平成29年民法(債権関係)改正により、新設された規定です。
契約の基本原則の一つとして認められている「契約自由の原則」について、それまで民法では明文の規定が設けられていませんでした。基本原則は、できる限り条文に明記されることが望ましいと考えられたことから、改正民法では、521条及び本条において、新たに規定が設けられました。
契約自由の原則には、
(1) 契約を締結し又は締結しない自由(契約締結の自由)、
(2) 契約の相手方を選択する自由(相手方選択の自由)、
(3) 契約の内容を決定する自由(内容決定の自由)、
(4) 契約締結の方式の自由(方式の自由)、
が含まれると考えられています。
本条では、上記(4)の原則を明文化しています。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 総則
- 民法第521条 – 契約の締結及び内容の自由
- 民法第522条 – 契約の成立と方式
- 民法第523条 – 承諾の期間の定めのある申込み
- 民法第524条 – 遅延した承諾の効力
- 民法第525条 – 承諾の期間の定めのない申込み
- 民法第526条 – 申込者の死亡等
- 民法第527条 – 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期
- 民法第528条 – 申込みに変更を加えた承諾
- 民法第529条 – 懸賞広告
- 民法第529条の2 – 指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告
- 民法第529条の3 – 指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告
- 民法第530条 – 懸賞広告の撤回の方法
- 民法第531条 – 懸賞広告の報酬を受ける権利
- 民法第532条 – 優等懸賞広告
- 民法第533条 – 同時履行の抗弁
- 民法第536条 – 債務者の危険負担等
- 民法第537条 – 第三者のためにする契約
- 民法第538条 – 第三者の権利の確定
- 民法第539条 – 債務者の抗弁
- 民法第539条の2 – 契約上の地位の移転
- 民法第540条 – 解除権の行使
- 民法第541条 – 催告による解除
- 民法第542条 – 催告によらない解除
- 民法第543条 – 債権者の責に帰すべき事由による場合
- 民法第544条 – 解除権の不可分性
- 民法第545条 – 解除の効果
- 民法第546条 – 契約の解除と同時履行
- 民法第547条 – 催告による解除権の消滅
- 民法第548条 – 解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅
- 民法第548条の2 – 定型約款の合意
- 民法第548条の3 – 定型約款の内容の開示
- 民法第548条の4 – 定型約款の変更
- 総則
- 契約
- 債権