- 民法第525条
-
- 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
- 対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
- 対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。
- 平成29年改正前民法第524条
- 承諾の期間を定めないで隔地者に対してした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。
条文の趣旨と解説
承諾の期間の定めのない申込み
承諾期間の定めのない申込みは、相当な期間を経過するまでは、申込者は申込みを撤回することはできません(本条1項本文)。平成29年改正前民法524条では、当該規律の適用対象を隔地者間の申込みに限定していましたが、隔地者という概念で適用対象を画する必要はないと考えられ、改正法では、隔地者に限定しないこととされました。
また、523条の改正と同様の理由から、申込者が撤回をする権利を留保したときには、撤回を認めることが明文化されました(本条1項ただし書)。
対話者間における承諾期間の定めのない申込み
平成29年改正前民法では、対話者間における承諾期間の定めのない申込みについて定める規定はありませんでした。
学説上は、規定がないことを理由とし、申込みの拘束力を認めず、申込撤回の自由を認める見解が有力に主張されていました。改正法は、当該見解を踏まえ、対話が継続している間であれば、いつでも撤回することができると規定しました(本条2項)。
また、申込みの効力(承諾適格)の期間については、学説上は、平成29年改正前商法507条の規定と同様に解し、相手方が直ちに承諾しなければ申込みはその効力を失うという見解が有力に主張されていました。改正法は、当該見解を踏まえ、「対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う」と規定しました(本条3項本文)。もっとも、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときには、対話の終了後も申込みの効力は失われないものとされています(本条3項ただし書)。
- 平成29年改正前商法第507条
- 商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 総則
- 民法第521条 – 契約の締結及び内容の自由
- 民法第522条 – 契約の成立と方式
- 民法第523条 – 承諾の期間の定めのある申込み
- 民法第524条 – 遅延した承諾の効力
- 民法第525条 – 承諾の期間の定めのない申込み
- 民法第526条 – 申込者の死亡等
- 民法第527条 – 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期
- 民法第528条 – 申込みに変更を加えた承諾
- 民法第529条 – 懸賞広告
- 民法第529条の2 – 指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告
- 民法第529条の3 – 指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告
- 民法第530条 – 懸賞広告の撤回の方法
- 民法第531条 – 懸賞広告の報酬を受ける権利
- 民法第532条 – 優等懸賞広告
- 民法第533条 – 同時履行の抗弁
- 民法第536条 – 債務者の危険負担等
- 民法第537条 – 第三者のためにする契約
- 民法第538条 – 第三者の権利の確定
- 民法第539条 – 債務者の抗弁
- 民法第539条の2 – 契約上の地位の移転
- 民法第540条 – 解除権の行使
- 民法第541条 – 催告による解除
- 民法第542条 – 催告によらない解除
- 民法第543条 – 債権者の責に帰すべき事由による場合
- 民法第544条 – 解除権の不可分性
- 民法第545条 – 解除の効果
- 民法第546条 – 契約の解除と同時履行
- 民法第547条 – 催告による解除権の消滅
- 民法第548条 – 解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅
- 民法第548条の2 – 定型約款の合意
- 民法第548条の3 – 定型約款の内容の開示
- 民法第548条の4 – 定型約款の変更
- 総則
- 契約
- 債権