- 民法第541条
- 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
- 平成29年改正前民法第541条
- 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
条文の趣旨と解説
平成29年民法改正前における解除の規定は、債務不履行の態様に着目し、改正前民法541条が「履行遅滞による解除」、改正前民法542条が「定期行為の履行遅滞による解除」、改正前民法543条が「履行不能による解除」の要件をそれぞれ定めていました。これに対し、改正民法では、催告の要否に着目し、民法541条の「催告による解除」、民法542条の「催告によらない解除」に整理されます。
債務者の帰責事由
平成29年民法改正前における従来の通説では、明文の規定はないものの、履行遅滞等による解除(改正前民法541条)、定期行為の履行遅滞による解除(改正前民法542条)についても、解除の要件として、債務者の帰責事由が要求されると解されていました。
改正民法では、解除を、履行を怠った債務者への制裁としてではなく、債権者を契約の拘束力から解放する制度であると捉え、債務者の帰責事由を解除の要件としないこととされました。
不履行が「軽微」でないこと
平成29年民法改正では、「当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須的でない附随的義務の履行を怠つたに過ぎないような場合」(最高裁昭和36年11月21日第三小法廷判決)には解除原因とはならないとする判例法理を参考に、一定の事由がある場合には解除をすることができない旨の阻却要件が付加されました。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 総則
- 民法第521条 – 契約の締結及び内容の自由
- 民法第522条 – 契約の成立と方式
- 民法第523条 – 承諾の期間の定めのある申込み
- 民法第524条 – 遅延した承諾の効力
- 民法第525条 – 承諾の期間の定めのない申込み
- 民法第526条 – 申込者の死亡等
- 民法第527条 – 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期
- 民法第528条 – 申込みに変更を加えた承諾
- 民法第529条 – 懸賞広告
- 民法第529条の2 – 指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告
- 民法第529条の3 – 指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告
- 民法第530条 – 懸賞広告の撤回の方法
- 民法第531条 – 懸賞広告の報酬を受ける権利
- 民法第532条 – 優等懸賞広告
- 民法第533条 – 同時履行の抗弁
- 民法第536条 – 債務者の危険負担等
- 民法第537条 – 第三者のためにする契約
- 民法第538条 – 第三者の権利の確定
- 民法第539条 – 債務者の抗弁
- 民法第539条の2 – 契約上の地位の移転
- 民法第540条 – 解除権の行使
- 民法第541条 – 催告による解除
- 民法第542条 – 催告によらない解除
- 民法第543条 – 債権者の責に帰すべき事由による場合
- 民法第544条 – 解除権の不可分性
- 民法第545条 – 解除の効果
- 民法第546条 – 契約の解除と同時履行
- 民法第547条 – 催告による解除権の消滅
- 民法第548条 – 解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅
- 民法第548条の2 – 定型約款の合意
- 民法第548条の3 – 定型約款の内容の開示
- 民法第548条の4 – 定型約款の変更
- 総則
- 契約
- 債権