民法第523条
  1. 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
  2. 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
平成29年改正前民法第521条
  1. 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。
  2. 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

条文の趣旨と解説

申込みの拘束力

契約の申込みを受けた者の契約成立に対する希望と信頼を保護するため、承諾の期間を定めた申込みの場合、申込者は申込みを任意に撤回することはできないものとされています(本条1項本文)。

撤回をする権利の留保

ただし、平成29年改正民法下においても、申込者が撤回する権利を留保した場合には、相手方が申込みに信頼することは薄いといえることから、申込みの拘束力を認める必要はないと解されていました(遠田新一『新版注釈民法(13)債権(4)』)。改正法は、この解釈を明文化し、申込者が撤回をする権利を留保したときは、申込みの撤回を認めることとされました(本条1項ただし書)。

申込みの効力の消滅

承諾の期間を定めてした申込みに対して、指定の承諾期間内に承諾を受けなかったときは、その申込みは効力を失います(本条2項)。

条文の位置付け