- 民法第536条
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- 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
- 債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
- 平成29年改正前民法第534条
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- 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その者が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
- 不特定物に関する契約については、第401条第2項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。
- 平成29年改正前民法第535条
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- 前条の規定は、停止条件付双務契約の目的物が条件の成否が未定である間に滅失した場合には、適用しない。
- 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰することができない事由によって損傷したときは、その損傷は、債権者の負担に帰する。
- 停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すべき事由によって損傷した場合において、条件が成就したときは、債権者は、その選択に従い、契約の履行の請求又は解除権の行使をすることができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
- 平成29年改正前民法第536条
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- 前二条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
- 債権者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
条文の趣旨と解説
債権者主義を定めた規定の廃止
平成29年改正前民法534条は、特定物売買における債務者の帰責事由によらない目的物の滅失又は損傷に関する危険負担の債権者主義を定め、目的物の滅失又は損傷の危険は、契約と同時に債権者に移転すると理解されていました。しかし、この債権者主義に対しては、その帰結が不当であるとの批判が向けられ、実務上は引渡時に危険が移転する旨の契約条項を定めたり、解釈上も債権者主義の適用を狭める解釈が提唱されたりしていました。
そこで、民法改正においては、債権者主義を定めた規定が削除されることとなりました。これにより、債務者主義を定めた民法536条の規定がすべての双務契約に適用されることになります。
履行拒絶構成
平成29年改正前民法536条1項は「反対給付を受ける権利を有しない」と定めており、危険負担の効果として反対給付債務は当然に消滅するものとされていました。他方で、平成29年民法改正における、解除の要件の変更により、債権者は、債務者の帰責事由を問うことなく、契約解除をすることができるようになりました。
そのため、改正前民法536条1項の規定をそのまま維持するとすれば、双方に帰責事由がない場合の反対債務について、危険負担と解除という制度が重複することが問題となりました。
そこで、改正法においては、危険負担の効果を反対給付債務を当然に消滅とするのではなく、反対債務の「履行を拒むことができる」という履行拒絶権を付与するという構成に改められました。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 総則
- 民法第521条 – 契約の締結及び内容の自由
- 民法第522条 – 契約の成立と方式
- 民法第523条 – 承諾の期間の定めのある申込み
- 民法第524条 – 遅延した承諾の効力
- 民法第525条 – 承諾の期間の定めのない申込み
- 民法第526条 – 申込者の死亡等
- 民法第527条 – 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期
- 民法第528条 – 申込みに変更を加えた承諾
- 民法第529条 – 懸賞広告
- 民法第529条の2 – 指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告
- 民法第529条の3 – 指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告
- 民法第530条 – 懸賞広告の撤回の方法
- 民法第531条 – 懸賞広告の報酬を受ける権利
- 民法第532条 – 優等懸賞広告
- 民法第533条 – 同時履行の抗弁
- 民法第536条 – 債務者の危険負担等
- 民法第537条 – 第三者のためにする契約
- 民法第538条 – 第三者の権利の確定
- 民法第539条 – 債務者の抗弁
- 民法第539条の2 – 契約上の地位の移転
- 民法第540条 – 解除権の行使
- 民法第541条 – 催告による解除
- 民法第542条 – 催告によらない解除
- 民法第543条 – 債権者の責に帰すべき事由による場合
- 民法第544条 – 解除権の不可分性
- 民法第545条 – 解除の効果
- 民法第546条 – 契約の解除と同時履行
- 民法第547条 – 催告による解除権の消滅
- 民法第548条 – 解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅
- 民法第548条の2 – 定型約款の合意
- 民法第548条の3 – 定型約款の内容の開示
- 民法第548条の4 – 定型約款の変更
- 総則
- 契約
- 債権