- 民法第542条
-
- 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
- 債務の全部の履行が不能であるとき。
- 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
- 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達成することができないとき。
- 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
- 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
- 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
- 債務の一部の履行が不能であるとき。
- 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
- 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
- 平成29年改正前民法第542条
- 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。
- 平成29年改正前民法第543条
- 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
条文の趣旨と解説
本条は、債務不履行があった場合に、催告を要しないで契約の解除をするための要件を定めるものです。
平成29年民法改正において、債務者の帰責事由が解除の要件から外されました。この点については、民法541条の解説をご参照ください。
無催告解除の要件の明確化
平成29年改正前民法は、解除の要件として催告が不要な場合として、「定期行為の履行遅滞による解除」(改正前民法542条)、「履行不能による解除」(改正前民法543条)を定めていました。
解除の要件としての催告は、債務者に履行の追完をする機会を与えて契約関係を維持する利益を保護する点にあるとされています。しかし、債務者が「催告を受けても契約をした目的を達するのに足りる履行をする見込みがないこと明白である」場合などは、解除に先立って催告することを要求するのが無意味と考えられます。
このような観点から、改正民法は、上記「定期行為の履行遅滞による解除」「履行不能による解除」の場合に加え、催告を要しないで解除ができる場面を類型化し、要件を明確化しています。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 総則
- 民法第521条 – 契約の締結及び内容の自由
- 民法第522条 – 契約の成立と方式
- 民法第523条 – 承諾の期間の定めのある申込み
- 民法第524条 – 遅延した承諾の効力
- 民法第525条 – 承諾の期間の定めのない申込み
- 民法第526条 – 申込者の死亡等
- 民法第527条 – 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期
- 民法第528条 – 申込みに変更を加えた承諾
- 民法第529条 – 懸賞広告
- 民法第529条の2 – 指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告
- 民法第529条の3 – 指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告
- 民法第530条 – 懸賞広告の撤回の方法
- 民法第531条 – 懸賞広告の報酬を受ける権利
- 民法第532条 – 優等懸賞広告
- 民法第533条 – 同時履行の抗弁
- 民法第536条 – 債務者の危険負担等
- 民法第537条 – 第三者のためにする契約
- 民法第538条 – 第三者の権利の確定
- 民法第539条 – 債務者の抗弁
- 民法第539条の2 – 契約上の地位の移転
- 民法第540条 – 解除権の行使
- 民法第541条 – 催告による解除
- 民法第542条 – 催告によらない解除
- 民法第543条 – 債権者の責に帰すべき事由による場合
- 民法第544条 – 解除権の不可分性
- 民法第545条 – 解除の効果
- 民法第546条 – 契約の解除と同時履行
- 民法第547条 – 催告による解除権の消滅
- 民法第548条 – 解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅
- 民法第548条の2 – 定型約款の合意
- 民法第548条の3 – 定型約款の内容の開示
- 民法第548条の4 – 定型約款の変更
- 総則
- 契約
- 債権