- 民法第667条の2
-
- 第533条及び第536条の規定は、組合契約については、適用しない。
- 組合員は、他の組合員が組合契約に基づく債務の履行をしないことを理由として、組合契約を解除することができない。
条文の趣旨と解説
平成29年民法(債権関係)改正に伴い、制定された規定です。
組合契約の法的性質については従来から争われており、双務契約とする説、双務契約ではない特殊な契約とする説、契約ではなく合同行為とする説がありました。もっとも、双務契約とする説も、その団体的性格に由来する組合契約の特殊性から、契約総則の規定の適用を制限してきました。組合契約の法的性質については引き続き解釈に委ねるとしても、契約総則の規定の組合契約への適用にどのような制約があるのかを具体的に定めることがルールの明確化のために望ましいという観点から、本条が制定されました(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。
同時履行の抗弁権
平成29年民法(債権関係)改正前の議論では、(i) 業務執行者が置かれている組合 (ii) 業務執行者が置かれていない組合でも、出資債務を履行している組合員から出資債務の履行の請求を受けた場合、同時履行の抗弁権を行使して、履行を拒むことはできない、ただ(iii)業務執行者が置かれていない組合において、出資債務の履行を請求する組合員が自己の出資債務を履行していないときには、同時履行の抗弁権を行使してその履行を拒むことができると解されていました。
しかし、(iii)のような場合であっても、組合の業務の円滑の観点からは、履行の請求を受けた組合員にその履行を拒むことを許すべきではないとの批判があり、同時履行の抗弁権(533条)は、全面的に適用されないこととされました(1項)。
危険負担
平成29年民法(債権関係)改正前の解釈においても、組合契約には危険負担の規定は適用されないと考えられていました。改正法でも、危険負担に関する規定(536条)は、組合契約については、適用されないものとされています(本条2項)。
解除
平成29年民法(債権関係)改正前の議論においても、組合契約には解除権の規定は適用されないものと解されてきました。組合員の一人が組合契約上の債務を履行しない場合にも、解除によるのではなく、除名(680条)、脱退(678条、679条)、解散(682条、683条)など、団体構成の変動として処理することが適当と考えられるからです。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 組合
- 民法第667条 – 組合契約
- 民法第667条の2 – 他の組合員の債務不履行
- 民法第667条の3 – 組合員の一人についての意思表示の無効等
- 民法第668条 – 組合財産の共有
- 民法第669条 – 金銭出資の不履行の責任
- 民法第670条 – 業務の決定及び執行の方法
- 民法第670条の2 – 組合の代理
- 民法第671条 – 委任の規定の準用
- 民法第672条 – 業務執行組合員の辞任及び解任
- 民法第673条 – 組合員の業務及び財産状況に関する検査
- 民法第674条 – 組合員の損益分配の割合
- 民法第675条 – 組合の債権者の権利の行使
- 民法第676条 – 組合員の持分の処分及び組合財産の分割
- 民法第677条 – 組合財産に対する組合員の債権者の権利の行使の禁止
- 民法第677条の2 – 組合員の加入
- 民法第678条 – 組合員の脱退
- 民法第679条 – 組合員の脱退
- 民法第680条 – 組合員の除名
- 民法第680条の2 – 脱退した組合員の責任等
- 民法第681条 – 脱退した組合員の持分の払戻し
- 民法第682条 – 組合の解散事由
- 民法第683条 – 組合の解散の請求
- 民法第684条 – 組合契約の解除の効力
- 民法第685条 – 組合の清算及び清算人の選任
- 民法第686条 – 清算人の業務の決定及び執行の方法
- 民法第687条 – 組合員である清算人の辞任及び解任
- 民法第688条 – 清算人の職務及び権限並びに残余財産の分割方法
- 組合
- 契約
- 債権