- 民法第556条
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- 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
- 前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。
条文の趣旨と解説
一般的に予約は、当事者間に将来本契約を締結する債務を生じさせる契約をいい、売買の予約は、買主又は売主が、本契約(売買)の締結を望んで申込みをすれば、相手方は承諾をしなければならない債務を負うことを定める契約を意味します。
予約がされた場合に、相手方が任意に承諾をしない場合には、本来であれば、承諾の意思表示を求める訴えを提起することとなりますが(民事執行法177条1項本文参照)、売買のような諾成契約においてもこのような順序を踏むことが迂遠であることから、民法は、売買の予約につき、売買を完結する意思を表示を表示した時から、相手方の承諾を要せずに、売買の効力を生ずるものと定めました(1項)。
もっとも、契約自由の原則から、相手方の承諾を必要とする予約も認められると解されています(我妻栄『債権各論中巻一』)。
予約完結権の存続期間は、契約に定めがあればそれに従います。契約に定めがない場合には、予約の義務者は、相手方に対して、相当の期間を定めて、売買を成立させるかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。当該期間内に確答がない場合には、予約は効力を失います(2項)。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 売買
- 民法第555条 – 売買
- 民法第556条 – 売買の一方の予約
- 民法第557条 – 手付
- 民法第558条 – 売買契約に関する費用
- 民法第559条 – 有償契約への準用
- 民法第560条 – 権利移転の対抗要件に係る売主の義務
- 民法第561条 – 他人の権利の売買における売主の義務
- 民法第562条 – 買主の追完請求権
- 民法第563条 – 買主の代金減額請求権
- 民法第564条 – 買主の損害賠償請求及び解除権の行使
- 民法第565条 – 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任
- 民法第566条 – 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限
- 民法第567条 – 目的物の滅失等についての危険の移転
- 民法第568条 – 競売における担保責任等
- 民法第569条 – 債権の売主の担保責任
- 民法第570条 – 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求
- 民法第572条 – 担保責任を負わない旨の特約
- 民法第573条 – 代金の支払期限
- 民法第574条 – 代金の支払場所
- 民法第575条 – 果実の帰属及び代金の利息の支払
- 民法第576条 – 権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶
- 民法第577条 – 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶
- 民法第578条 – 売主による代金の供託の請求
- 民法第579条 – 買戻しの特約
- 民法第580条 – 買戻しの期間
- 民法第581条 – 買戻しの特約の対抗力
- 民法第582条 – 買戻権の代位行使
- 民法第583条 – 買戻しの実行
- 民法第584条 – 共有持分の買戻特約付売買
- 民法第585条 – 共有持分の買戻特約付売買
- 売買
- 契約
- 債権