- 民法第579条
- 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第583条第1項において同じ。)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
- 平成29年改正前民法第579条
- 不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
条文の趣旨と解説
買戻しは売買契約の売主が将来買い戻すことのできる権利を留保する契約です。買い戻す権限を留保する法律的手段としては、再売買の予約をする方法や、解除権を留保する方法などがありますが、民法579条以下に定める「買戻し」は、解除権の留保という法律構成を採ります。
平成29年民法(債権関係)改正について
買戻しの代金(解除により売主が返還すべき金額)は、利息制限法の潜脱を防ぐ趣旨から、買主が支払った売買代金と契約の費用を越えることができないものと定められ、強行規定であると解されていました。
しかし、この規定の適用を避けるために、実務上は再売買の予約が用いられており、買戻しの代金の範囲を定める実益は乏しいと指摘されていました。また、担保以外の目的で買戻しが用いられる場面においては、買戻しの代金の範囲につき柔軟な取扱いを認めるべきとも考えられます(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。
そこで、改正法では、当事者の合意により買戻しの代金の額を定めることができる旨が規定されました。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 契約
- 売買
- 民法第555条 – 売買
- 民法第556条 – 売買の一方の予約
- 民法第557条 – 手付
- 民法第558条 – 売買契約に関する費用
- 民法第559条 – 有償契約への準用
- 民法第560条 – 権利移転の対抗要件に係る売主の義務
- 民法第561条 – 他人の権利の売買における売主の義務
- 民法第562条 – 買主の追完請求権
- 民法第563条 – 買主の代金減額請求権
- 民法第564条 – 買主の損害賠償請求及び解除権の行使
- 民法第565条 – 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任
- 民法第566条 – 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限
- 民法第567条 – 目的物の滅失等についての危険の移転
- 民法第568条 – 競売における担保責任等
- 民法第569条 – 債権の売主の担保責任
- 民法第570条 – 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求
- 民法第572条 – 担保責任を負わない旨の特約
- 民法第573条 – 代金の支払期限
- 民法第574条 – 代金の支払場所
- 民法第575条 – 果実の帰属及び代金の利息の支払
- 民法第576条 – 権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶
- 民法第577条 – 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶
- 民法第578条 – 売主による代金の供託の請求
- 民法第579条 – 買戻しの特約
- 民法第580条 – 買戻しの期間
- 民法第581条 – 買戻しの特約の対抗力
- 民法第582条 – 買戻権の代位行使
- 民法第583条 – 買戻しの実行
- 民法第584条 – 共有持分の買戻特約付売買
- 民法第585条 – 共有持分の買戻特約付売買
- 売買
- 契約
- 債権