民法第145条
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
平成29年改正前民法第145条
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

条文の趣旨と解説

時効の効果につき、民法162条1項は「取得する」、民法166条1項は「消滅する」と規定し、時効によって確定的に権利が変動すると読める表現を用いていることから、「援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と定める本条との関係が議論されてきました。
この点について、判例は「時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解する」と解しています(最高裁昭和61年3月17日第三小法廷判決)。

平成29年民法(債権関係)改正について

改正前民法145条は、援用権者を「当事者」とのみ規定していましたが、改正前民法下における判例は「当事者とは、時効によって直接に利益を受ける者、すなわち取得時効によって権利を取得し、又は消滅時効によって権利の制限若しくは義務を免れる者を指す」と判示し、具体的には、保証人(大審院昭和8年10月13日判決)や物上保証人(最高裁昭和43年9月26日第一小法廷判決)などが該当するとしていました。
改正民法は、これらの判例法理を踏まえて、援用権者の範囲を明文化しています。

条文の位置付け