民法第605条の4
不動産の賃借人は、第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。

  1. その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
  2. その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

条文の趣旨と解説

平成29年民法(債権関係)改正によって新設された規定です。
改正前民法下においても、判例は、二重賃貸借が行われた事案において、「第三者に対抗できる賃借権を有する者は爾後その土地につき賃借権を取得しこれにより地上に建物を建てて土地を使用する第三者に対し直接にその建物の収去、土地の明渡を請求することができる」と判示していました(最高裁昭和28年12月18日第二小法廷判決)。また、不法占有が行われている事案において、「賃借権に基いて第三者に対し建物の収去土地の明渡を請求し得る」と判示していました(最高裁昭和30年4月5日第三小法廷判決)。
そこで、改正民法では、これらの判例法理を踏まえ、賃借権それ自体に基づく妨害排除請求権や返還請求権が明文化されました。

条文の位置付け