民法第577条
  1. 買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
  2. 前項の規定は、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。
平成29年改正前民法第577条
  1. 買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
  2. 前項の規定は、買い受けた不動産について先取特権又は質権の登記がある場合について準用する。

条文の趣旨と解説

買い受けた不動産に抵当権等の担保物権があるときには、買主は抵当権等の消滅請求をすることができ(379条341条361条)、そのために支払った金額の償還を売主に請求することができます(570条)。
そこで、抵当権消滅請求が終了するまでは、代金の支払を留保し、償還すべき金額を代金から差し引いて支払うことが簡便であり、公平ともいえます。そこで、買主に代金の支払いを拒むことができるものと定めました(本条)。

平成29年民法(債権関係)改正では、「契約の内容に適合しない」との文言が追加されていますが、これは、あらかじめ当事者が抵当権等の存在を考慮して代金額を決定していた場合は、抵当権消滅請求の機会を与える必要がないことから、本条の適用がないことを明記するものです(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。

条文の位置付け