- 民法第474条
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- 債務の弁済は、第三者もすることができる。
- 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。
- 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。
- 前3項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。
- 平成29年改正前民法第474条
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- 債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
- 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。
条文の趣旨と解説
債権の目的を達成できる限りでは、弁済は債務者自身の弁済に限定する必要がないものと考えられることから、民法は、原則として第三者も弁済をすることができると定めます(本条1項)。もっとも、債務者及び債権者の立場を考慮する必要もあることから、第三者の弁済が制限される場合もあることを規定しています。
正当な理由を有する者以外の第三者の弁済
債務者の意思に反する場合
債務者の意思を尊重するとともに、第三者による求償権の行使から債務者を保護するため、弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができません(本条2項本文)。したがって、正当な利益を有する者以外の第三者が、債務者の意思に反して弁済をした場合は、その弁済は無効となります。
しかし、債務者の意思に反していた場合でも、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、弁済は有効となります(本条2項ただし書)。
債権者の意思に反する場合
債権者は、弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者に対しては、その弁済を拒むことができます(本条3項)。後から第三者の弁済が債務者の意思に反するものが判明した場合、本条2項ただし書の要件を満たさない限り、弁済が無効となる可能性があることから、債権者の利益を保護したものです。
しかし、正当な利益を有する者でない第三者による弁済であっても、履行引受契約など債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、弁済を拒むことができないものとされています(本条3項ただし書)。
債務の性質が第三者の弁済を許さないとき等
債務者が自身で給付をしなければ債権の目的である給付とみることができない一身専属的給付の場合には、第三者は弁済をすることができません。また、当事者が第三者の弁済を禁止し、又は制限する旨の意思表示をしたときは、第三者は弁済をすることができません(本条4項)。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 総則
- 債権の消滅
- 弁済
- 総則
- 民法第473条 – 弁済
- 民法第474条 – 第三者の弁済
- 民法第475条 – 弁済として引き渡した物の取戻し
- 民法第476条 – 弁済として引き渡した物の消費又は譲渡がされた場合の弁済の効力
- 民法第477条 – 預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済
- 民法第478条 – 受領権者としての外観を有する者に対する弁済
- 民法第479条 – 受領権者以外の者に対する弁済
- 民法第481条 – 差押えを受けた債権の第三債務者の弁済
- 民法第482条 – 代物弁済
- 民法第483条 – 特定物の現状による引渡し
- 民法第484条 – 弁済の場所及び時間
- 民法第485条 – 弁済の費用
- 民法第486条 – 受取証書の交付請求
- 民法第487条 – 債権証書の返還請求
- 民法第488条 – 同種の給付を目的とする数個の債務がある場合の充当
- 民法第489条 – 元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当
- 民法第490条 – 合意による弁済の充当
- 民法第491条 – 数個の給付をすべき場合の充当
- 民法第492条 – 弁済の提供の効果
- 民法第493条 – 弁済の提供の方法
- 総則
- 弁済
- 債権の消滅
- 総則
- 債権