民法第484条
  1. 弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。
  2. 法令又は慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済をし、又は弁済の請求をすることができる。
平成29年改正前民法第484条
弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所において、それぞれしなければならない。

条文の趣旨と解説

弁済をすべき場所について当事者の意思表示がないときは、特定物の引渡を目的とする債務は、債権発生の当時その物の存在した場所において弁済すべきとされ、特定物の引渡以外の給付を目的とする債務は、債権者の現在の住所(22条)において、弁済をすべきこととされています(本条1項)。

本条1項の特則として、売買契約の場合、売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所が代金の支払場所とされています(574条)。
寄託契約の場合、寄託物の返還は、その保管をすべき場所でしなければならないとされています(664条)。
また、商行為によって生じた債務の場合、履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならないとされています(商法516条)。

本条2項は平成29年民法(債権関係)改正により新設された規定です。
平成29年改正前商法520条において「法令又は慣習により商人の取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、債務の履行をし、又はその履行の請求をすることができる。」と定められていたところ、当該商法の規律内容は、必ずしも商取引に特有のものではなく、取引一般について当てはまると考えられたことから、民法に規定が設けられたものです。

条文の位置付け