民法第492条
債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる。
平成29年改正前民法第492条
債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。

条文の趣旨と解説

平成29年改正前民法492条は、「債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。」と定めていましたが、他方で、改正前民法413条では「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。」と定められており、この両者の区別及びそれぞれの効果が明らかではありませんでした。

改正前民法下における解釈によれば、弁済の提供又は受領遅滞の効果として、(1) 債務者の債務不履行責任の不発生、(2) 債権者の同時履行の抗弁権の消滅、(3) 特定物の引渡しの場合における注意義務の軽減、(4) 増加費用の債権者負担、(5) 目的物滅失等の場合における危険の移転、これらの効果が発生するものと考えられていました。
改正民法においては、弁済の提供の効果を(1)及び(2)と整理し、(2)については533条において既に規定されていることから、本条では、(1)の効果のみを規定することとしています(『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』)。

条文の位置付け