- 民法第456条
- 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第427条の規定を適用する。
条文の趣旨と解説
同一の主たる債務について数人が保証債務を負担することを「共同保証」といいます。
共同保証には、(ア)各保証人が普通の保証人である場合、(イ)各保証人が連帯保証人である場合、(ウ)普通の保証人であるが、各保証人が全額を弁済すべき旨の特約がある場合(465条1項参照。「保証連帯」といいます。)があります。
上記(ア)各保証人が普通の保証人である場合は、それぞれ保証人が各別に保証したときであっても、債権者との関係では、主たる債務の額を等しい割合をもって分割された額についてのみ(427条)、保証債務を負担します(本条)。「分別の利益」と呼ばれています。
これに対して、(イ)各保証人が連帯保証人である場合は、各保証人において主たる債務の全額を弁済すべき義務があるため、各共同保証人間に連帯の特約がなくとも、分別の利益を有しないと解されています(大審院明治39年12月20日判決)。
また、(ウ)保証連帯の場合も、各保証人は分別の利益を有しません。もっとも、各保証人が負担する債務は連帯保証債務ではないので、補充性があり、各保証人には検索及び催告の抗弁権(452条及び453条)が認められます。
条文の位置付け
- 民法
- 債権
- 総則
- 多数当事者の債権及び債務
- 保証債務
- 総則
- 民法第446条 – 保証人の責任等
- 民法第447条 – 保証債務の範囲
- 民法第448条 – 保証人の負担と主たる債務の目的又は態様
- 民法第449条 – 取り消すことができる債務の保証
- 民法第450条 – 保証人の要件
- 民法第451条 – 他の担保の供与
- 民法第452条 – 催告の抗弁
- 民法第453条 – 検索の抗弁
- 民法第454条 – 連帯保証の場合の特則
- 民法第455条 – 催告の抗弁及び検索の抗弁の効果
- 民法第456条 – 数人の保証人がある場合
- 民法第457条 – 主たる債務者について生じた事由の効力
- 民法第458条 – 連帯保証人について生じた事由の効力
- 民法第458条の2 – 主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務
- 民法第458条の3 – 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務
- 民法第459条 – 委託を受けた保証人の求償権
- 民法第459条の2 – 委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権
- 民法第460条 – 委託を受けた保証人の事前の求償権
- 民法第461条 – 主たる債務者が保証人に対して償還をする場合
- 民法第462条 – 委託を受けない保証人の求償権
- 民法第463条 – 通知を怠った保証人の求償の制限等
- 民法第464条 – 連帯債務又は不可分債務の保証人の求償権
- 民法第465条 – 共同保証人間の求償権
- 総則
- 保証債務
- 多数当事者の債権及び債務
- 総則
- 債権