民法第463条
  1. 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその保証人に対抗したときは、その保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。
  2. 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知することを怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
  3. 保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合においては、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたときのほか、保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときも、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる。
平成29年改正前民法第463条
  1. 第443条の規定は、保証人について準用する。
  2. 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、善意で弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、第443条の規定は、主たる債務者についても準用する。

条文の趣旨と解説

主たる債務者及び保証人が二重に弁済をすることを防止し、また、主債務者が債権者に対抗することのできる事由を有している場合にそれを主張する機会を与えるため、以下のとおり、債務の消滅行為をしたことに関して、通知をすべきこととしています。

委託を受けた保証人の事前通知

委託を受けた保証人が、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為をしたときは、主たる債務者に対して求償権を有します(459条1項)。
しかし、主たる債務者にあらかじめ通知をしないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができる事由をもってその保証人に対抗することができるものとされています(本条1項前段)。主たる債務者が相殺(505条)をもって対抗したときは、保証人は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができます(本条1項後段)。

なお、平成29年改正前民法463条1項において準用する同443条1項は、事前通知が必要とされる保証人の範囲を限定しておらず、委託を受けない保証人に関しても、事前の通知を要求していました。しかし、委託を受けない保証人については、そもそも、事前の通知の有無にかかわらず、求償権が制限されることから(462条1項及び2項)、改正民法では、委託を受けない保証人につき、事前通知を定める本条1項の対象から除外しています。

主債務者の事後通知

主たる債務者が、委託を受けた保証人に対して、債務の消滅行為をしたことの通知を怠ったため、その保証人が善意で債務の消滅行為をしたときは、その保証人は、その債務消滅行為を有効であったものとみなすことができます(本条2項)。

保証人の事後通知

保証人が債務の消滅行為をした後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合において、(ア)保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたとき、(イ)保証人が債務の消滅行為をしたことを主たる債務者に通知することを怠ったため、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができます(本条3項)。

条文の位置付け